2010年11月25日木曜日

To Contemporary

レストランからは海と河口が見える。

港湾の潮位は毎日めまぐるしく変わり、河口は満潮で満たされている時と干潮で川底が見えている時がある。晴れていると空には本当に沢山の星があり、東京から来た僕はこの空にとても驚いた。空にはこんなに星があったのか。都会にはない新鮮さで贅沢な夜空だ。新月から満月への移ろいと潮汐作用の関係をつぶさに体感できる環境なのだ。月夜の翌日は市場への魚の入荷も少ない。

自然体であることはとても大切なことかもしれない。必要以上に素材に手をかけてはいけない。素材本来の持ち味を生かさなければいけない。しかし、素材そのものだったら料理人の存在価値はない。

強調と抑制の狭間で極限まで手をかけ、なおかつ、シンプルな素材の風味と、マリアージュから生まれる第3の味の複雑さを最大限に引き出すことができたなら、初めて誰が作ったのかが問題になるのではないだろうか。

プリミティブな風味の集積を、デザインされた味覚の中でコンテンポラリーに表現する。料理を難しくするのはいとも簡単だ。