2012年3月9日金曜日

Temperature gradient

かつては「加熱」と「火入れ」という言葉は同義のように使われてきた。しかし実際には電子レンジのマイクロ波加熱やInduction Heatingの電磁誘導など火とは別のカロリーを与える方法がある。調理においての「火」とは特に「炎」を指すのではなく加熱調理全般という意味だった。

というか、炎で炙り焼くよりもポシェとかロティのように媒介を通して加熱する頻度が多いいわけだから媒介である水なり空気にカロリーを与える熱源が炎なのか電磁なのかは調理の結果に大きな影響を与えない。

違いが顕著に出るのは「炭火焼」、「ガス火焼」などの差だ。

最近の先鋭料理の特徴ともいえる「均一なロゼ」のような加熱は一歩間違えると「ハム」のような仕上がりになることがある。素材や加熱の方法にもよるだろうがもう少し温度勾配を持たせた方が良いと思える場合も少なくない。

品種、産地、部位、切りかたなどのファクターは勿論重要だが、牛肉の場合は昔ながらの中心は生よりに加熱を残し、外よりの部分はある程度加熱され、表面はメイラード反応が程良く出ている、いわゆる「ミディアム・レアー」的な加熱は牛肉にとても適している。

鶏、鳥、豚などの肉類とは違うのだ。

その上で今一度、温度にデリケートな素材にあえて「温度勾配」を意識した加熱を再考してみる必要があるのではないだろうか。

そこに加熱のダイナミズムが生まれてくる。