2012年5月9日水曜日

Terrine de Foie-Gras

今まで、色々なやり方で「フォア・グラ」に挑戦してきた。フランス料理を象徴する、フランス料理の料理人なら一度は必ず向かい合わなければならない登竜門、それでいてなかなか言うことを聞いてくれない素材。

作業手順もさることながら、温度管理が重要な素材だ。僕はどちらかと言うとフォア・グラの真髄はポワレなどよりもむしろパテやテリーヌのような冷製料理にあると思っている。

勿論、ポワレやショソンのような料理だって難しいし、沢山挑戦してきた。

かつては、場合によっては今でも、「フォア・グラ」を作業しやすい温度に調整した後、デネルヴェ、そしてアセゾネ、エピセを兼ねアルコールとマセレをして、割れた「フォア・グラ」を元の形に戻し、数時間~1晩、その時の考えに合わせて寝かせ、テリーヌに詰めて、繊細な温度管理をしてバン・マリでキュイする。オーブンには入れない。プラックの隅っこで。その後、プレセして適度に脂を抜きつつ引き締め、冷蔵庫に少なくとも2~3日保存し落ち着かせる。テリーヌから取り出し、カルトやムニュの状況にもよるが15mm~18mm程度の厚みに切り、提供温度を調整してアシェットへ。

こんな調子でアン・トションにしたり、ブリオッシュに入れたり、さらにキャナールのテリーヌの中心に詰めたり、オマールや野菜とモザイクを組んでアン・ジュレのような表現にしたりと・・・。そう、忘れてはならないのがフランス産の黒トリュフとの出会いだ。

無限の出会いと可能性がある。

しかし今日は少し違うやり方で。「フォア・グラ」をグリエにのせ、更にホテル・パンにのせ、そして49℃、加湿100%に設定したスチーム・コンヴェクション・オーブンでヴァプールする。「フォア・グラ」全体の温度が約48℃になったら取り出す。大きさにもよるが1時間30分~2時間くらい。脂はグリエの下に落ちるので「フォア・グラ」自体は中に浮いたような状態だ。それに完全に脂が落ちているわけではない。浅いバットに「フォア・グラ」を移し温かいうちにピンセットやクトーを使い筋を引き抜く。アセゾネもアルコールも使わない(消毒のアルコールは使う)。そしてフィルムを張った型に静かに移して型ごと氷で冷やし、冷蔵庫へ。2時間~3時間冷却する。重しなどもしない。

型から取り出し、セル、ミニョネット、複雑にメランジェした様々なエピス、ピスターシュのユイル、フィグなんかのピュレを添えて。温度が高すぎると美味しくない。直前まで冷蔵庫で良いと思う。舌の上ですぐに溶ける。

時間の節約や手抜きのための方法ではない。あくまで美味しさを追及してゆく過程のやり方だ。しかし、冷製の「フォア・グラ」がわずか5時間足らずで提供できるのは良いこともある。作業時間だけなら30分~40分だ。

でも、かつてのやり方の上に今日がある。先輩や仲間の苦労の上に成りたっていることばかり。そして才能ある人たちがすごい未来を作るんだろうな。