hotel de yoshino 1
【 料理人のレイヤー 】
和歌山のオテル・ド・ヨシノにお伺いした。
ではなく、手島純也に会いに行った。
僕がフランスから帰国して、東京で独立したのが1993年、
純也と僕の交流が始まったのがその翌年くらいからだったかな~。
もう20年以上の付き合いになる。
デジュネを食べに来てくれて、食事のあと二人で話をした。
沢山話した。
そんな事を何度も繰り返した。
フランスへ渡った後も、帰国するたびに来てくれた。
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料理人は皆自分の中に「レイヤー」をもっている、と思う。
そのレイヤーを真上から覗き込むと、その料理人の料理の本質が見える。
レイヤーは階層的に重ねられたガラスの板。
ガラスの板には色々な物が描画されている。
例えば、
一番下のガラス板には自分の生い立ちや過去の思い出が描写されている。
二番目のレイヤーには料理人てしての修行経験、体験が描かれている。
三番目はフランス古典料理のレイヤー、純也にとって重要なレイヤーだ。
四番目は恩師や師匠吉野シェフへのリスペクト。
五番目には苦悩と葛藤。
六番目のレイヤーには闘争と挑戦。
そして7番目・・・!
それらが描かれているガラスのキャンバスを真上から覗き込んだ。
そこにはフランス古典料理のリプロダクションは存在しなかった。
僕はオテル・ド・ヨシノのテーブルで、
トラディショナルでは無い、モダンでも無い、時流のイノヴェーティブでも無い、
真のアイデンティティ、料理という表現と個の同一性を見て、感動した。
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現代のフランス料理に今までに無い新しい道が開けたのかもしれない。
しかし、これからも料理人のレイヤーは重なり続けて行くと思う。
また行くよ。