2010年11月30日火曜日

Anniversaire

僕は48ヵ月前の12月に高松にやって来た。そして42ヵ月前の6月に長女が生まれた。36ヵ月前の12月にこのレストランをオープンした。10ヵ月前に二女が生まれた。激動の4年間だな。しかしそのほとんどが良いことばかりで楽しい思い出だ。

今日、テラスで幼稚園の制服を着た娘と落ち葉拾いをして遊んだ。大きくなった。明日、12月1日でレストランはオープン3周年だ。

いよいよ冬になる。

2010年11月29日月曜日

Start Test

いよいよ「アソート・タルトレット」のテスト・データ収集が始まった。

2010年11月27日土曜日

Mariage

今日は結婚披露宴だった。日本人のとっても綺麗な新婦と、アメリカ人のかっこいい新郎。とても素敵なパーティーだったと思う。一生の思い出になる大切な食事会を僕達に依頼してくださり、本当にありがとうございました。

2010年11月26日金曜日

Plaque

僕が最も愛している道具の一つは、厚さを40mmに、材質を鉄に特別注文してチューアップした加熱調理器具だ。通常はもっと薄くて材質は鋳物鋳造だ。調理場ではプラックと呼んでいる。ヨーロッパ、特にフランス料理独特の道具だと思う。鉄板を下から炎で加熱して使うのだがここで直接食材を焼いたりしない。鍋を置いて無段階に熱量を調節して使う。その他、インダクション・ヒーターやスチーム・コンベクション・オーブンを利用するのだが、炭を使う意外、直接炎で調理することはほとんどない。だから調理場で火を目にすることはない。火の見えない調理場だから他所とは雰囲気が違う。

もしプラックが使えないとしたら、料理を作りたいとは思わない。それくらい特別な思いがある。

2010年11月25日木曜日

To Contemporary

レストランからは海と河口が見える。

港湾の潮位は毎日めまぐるしく変わり、河口は満潮で満たされている時と干潮で川底が見えている時がある。晴れていると空には本当に沢山の星があり、東京から来た僕はこの空にとても驚いた。空にはこんなに星があったのか。都会にはない新鮮さで贅沢な夜空だ。新月から満月への移ろいと潮汐作用の関係をつぶさに体感できる環境なのだ。月夜の翌日は市場への魚の入荷も少ない。

自然体であることはとても大切なことかもしれない。必要以上に素材に手をかけてはいけない。素材本来の持ち味を生かさなければいけない。しかし、素材そのものだったら料理人の存在価値はない。

強調と抑制の狭間で極限まで手をかけ、なおかつ、シンプルな素材の風味と、マリアージュから生まれる第3の味の複雑さを最大限に引き出すことができたなら、初めて誰が作ったのかが問題になるのではないだろうか。

プリミティブな風味の集積を、デザインされた味覚の中でコンテンポラリーに表現する。料理を難しくするのはいとも簡単だ。

2010年11月24日水曜日

Assort Tartelettes

クリスマスや年末、お正月ように「アソート・タルトレット」を作る。8種類の小さなタルトを16個、化粧箱に入れる。結構可愛いくできた。

けれど大変なのはこれからだ。生産の効率化、安全性や安定した品質などを確実なものにするためのメソッドを確立しなければならない。まずはミーティングを行い、完成品から逆算したプロセスや危害要因を確認していく。分析するべき管理点をはっきりさせることがとても重要だ。ミーティングから得られた結論をコンピューターを使い、言葉とイメージでわかりやいソースにする。それをもとに数度のテストを繰り返しデータを蓄積して、フローチャートとルセットを構築してゆくのだ。

このようなスキルの蓄積がレストランの城壁をより強固なものにしてくれる。僕が望んでいるものは進歩と発展ただそれだけだ。そのためならどんな努力も惜しまない。

2010年11月23日火曜日

Number

僕は6月生まれだから、何となく6という数字が好きだ。自分に限らず生まれ月や日の数字が好きな人はとても多いと思う。さすがにセキュリティーのパスワードに使う時代ではなくなったけれど、車のナンバー・プレートなどにする人はいる。

走行距離がぞろ目になった。わざわざ車を止めて写真を撮った。日曜日でよかったな。ことりが助手席で僕を見ている。ことりも6月生まれだ。君も6が好きになるよ、きっと。

2010年11月22日月曜日

2010.11.18 /19 /20 Beaujolais Nouveau

毎年、ボジョレ・ヌーボーの「解禁日にはボジョレ・ヌーボー飲み放題パーティー」を開催している。今年は3日間に延長して開催した。実に150人ものお客様にお越しいただいた。ありがとうございました。開けたボジョレはボトル60本と1樽10リットルだ。ボジョレだけで55,000ミリ・リットル。毎年デザインが変わるポール・サパンの可愛いボトル。今年は小鳥が葡萄をくわえて飛んでいた。

2010年11月20日土曜日

Sensitivity

子供の頃、どうしてもしたくないことを強要されると「自分も他人も世界もすべて消えてなくなれ」と思った。心の中にある自分だけの部屋に閉じこもって、扉につっかえ棒をして、灯りを消して、食事もしないで、うずくまって、震えた。それは誰もが普通にできる何でもない簡単なことなのに、嫌だった。自分の気持ちは永遠に理解されないと思った。自分が見つけられず、自分が誰なのかわからずにもがいていた。

ひょっとしたら今でも。

子供のピュアなデリケートさは感性の光だ。その輝きを大人になってもずっと持ち続けている人が僕は好きだ。

2010年11月19日金曜日

Thon rouge

青森から本マグロが来てしまった。大きいしちょっと怖い。それにおろす包丁がない。普通の出刃庖丁で挑戦してみようか。使い込んだ歯はすり減っている。リアルだなー。頭どうしようかなー。でかいし。子供に見せたら泣くだろうなー。

2010年11月18日木曜日

2010 Beaujolais Nouveau

毎年11月の第3木曜日、ボジョレ・ヌーボーの解禁日当日から2日間は「解禁パーティー」を開催する。東京の時からずっと続けている。昨年は人数が多すぎてレストランからお客様があふれてしまった。スミマセンでした。なので今年は1日延長して3日間、土曜日までにした。詳しくはイベント・サイトをご覧ください。とても楽しいビュッフェ・スタイルのディナー。

食材も色々発注しているのだが今年は大間からマグロが丸ごと届く予定だ。寿司でも握ってみようかと思案中。

「ワインが好きでもボジョレ・ヌーボーには興味がない」、というお客様、年に一度のお祭りですから。だまされたと思って、是非。

2010年11月17日水曜日

Le Marche 2010.11.17

どこのお店でもそうなのだろうけれど、我々のレストランにも「常連さん」がいる。僕が毎日市場へ出向くのは何度も繰り返し足を運んでくださるお客様のために極上の素材を用意したいからだ。初めてご来店いただいてから、今日までお出ししたお料理はすべて記録してある。

さて、1キロ近い活ウマヅラハギだ。腹一杯に肝が入っている。鮟鱇の肝のようだ。フグ目のこの魚は半透明の身を薄造りにするとフグに迫る美味しさだ。肝とともに食す。瀬戸内海のスペシャリテ、ハギはカルパッチョにする。

脂がのってきている天然真鯛。蒸し焼きにして広島産マイクロ・リーフを添える。この広島から届く香草、ベビー・リーフやそのマイクロが僕のお気に入りだ。

活アオリイカはもちろん生でも美味しいが天ぷらのような生地でフリットしたり、ラヴィオリも良い、野生茸とともに。

北海道からやって来る毛ガニは生きた状態でオガクズに入れられている。元気の良い奴を選んできた。

だからこのバットの中はすべて生きた魚が入っているのだ。すごいな瀬戸内海。

基本はかけがえのない地元の素材、忘れる事のできない日本各地の素材、唯一無二の世界の素材、これらを上手く融合させてここ、香川でしか味わえない逸品を作りたい。

カキは市場のおやじがくれた。なぜかはわからない。

2010年11月16日火曜日

Mont-Blanc

地元、香川県とお隣の愛媛県には最高の栗がある。その栗を9月下旬から10月にかけて仕入れ、3週間くらいほったらかしにする。そうすると栗は糖度が上がり甘くなる。すぐには手をつけない。山から届いたまんまの殻付き栗だから当然なのだけれど殻をむかないといけない。一つ一つ殻をむいてピュレになるまで加工する。大変な作業だ。フランスやスペインの栗も美味しい。すでにピュレ状の缶詰の製品がある。個性が違うのでどちらが良いとは言えない。僕は地元の栗をむく。毎日、毎日ひたすらむく。半端な数ではない。

僕は「Mont-Blanc」という名前が実はしっくりこない。「Gateau Chataigne」とか「Torche aux Marrons」という方が良い。「モン・ブラン」は1907年創業の老舗「アンジェリーナ」のお菓子のことだ。日本でも銀座にある「プランタン」で食べることができる。すごく甘い、けれど美味しい。「元祖」があるのだから何となく遠慮もある。

昨年のクリスマスには300台以上販売した我々の秋・冬の定番になりつつある「瀬戸内マロンのスペシャル・ガトー」だ。

2010年11月15日月曜日

Bibliographie 6 [La Cuisine Immediate]

「La Cuisine Immediate」 par Pierre Gagnaire

1988年10月17日、Paris, Porte de Versaillesで開催されていた「ホテル・レストラン・ショー」でのプログラムの一つに、当時Saint-Etienneでミシュランの2星、Gault-Millauで赤帽4つの19 /20を獲得していたPierre Gagnaire chefのデモストレーションがあると聞いて足を運んだ。

今日では押しも押されもせぬフランスを代表する3星シェフだがあの頃は流星のごとく現れ一気にその評価を上げていった新世代のシェフだった。今でこそデザインを強く意識した料理が台頭しているけれどPierre Gagnaire 氏はその流れを作った先駆者だ。

デザインやそ瞬間の閃き、といった感性を皿にのせ話題になった。Immediateとは「即時の、即座の」、という意味の言葉だ。

「La Cuisine Immediate」は「Robert Laffont」より1988年Parisで出版された。「les recettes originales de ~」という主にミシュランの星を獲得しているシェフのルセットを取り上げてシリーズ化された書籍で僕の書棚にもその多くが並んでいる。

1988年10月17日、パリ、ポルト・ド・ヴェルサイユでデモストレーション終了後ムッシュ・ガニェールにサインをお願いした。そして2005年11月30日、東京青山に新店を出店した際、オープンまだ3日目で来日中だった彼にもう一度サインをしてもらった。17年越しで一冊の本に2回のサインをもらった僕の宝物だ。


2010年11月13日土曜日

Bibliographie 5 [Le Guide Culinaire]

「Le Guide Culinaire」 par Georges Auguste Escoffier

A. Escoffierの「Le Guide Culinaire」の初版は1902年Parisで出版された。その後、2版1907年、3版1912年、最後の改訂4版1921年となり、復刻版、初版が「Editions Flammarion」から1948年、その後再刷を重ねて僕の手元にあるのは1987年に刷られた本だ。実に5000種類の調理方が掲載されている。

邦訳は1969年11月1日に柴田書店より「エスコフィエ フランス料理」として出版された。B5正・上製、総ページ数1496頁。11月1日は原書の初版の序文にエスコフィエがサインしている日付と同じ。

フランス料理界では今日でもバイブルとして君臨する歴史的にも重要な書籍。僕はこの大著とこれから先どれだけ関わって行くのか、想像もつかない。

2010年11月12日金曜日

Agneau de lait

ハンガリーと言えば近年、フォア・グラの産地として有名になった。僕はフランス産のフォア・グラを使う機会が多いけれどハンガリーの物もなかなかの品質だ。ハンガリーからはその他、ジビエなどの食材も輸入されるようになったが最近では「ミルク・ラム」の良質な物が届く。

フランスでは「アニョー・ド・レ」と呼ばれ、珍重される食材の「ミルク・ラム」はまだ草を食む前の小さな幼羊だ。半頭単位、約4キロ程の物が入荷する。半頭なので腕肉、肩肉、背肉、鞍下肉、股肉、その他と各部位を適切に処理、調理しないとロスが出てしまう難しい素材でもある。

今日は鞍下肉の部分の骨を外し筒状に成形してクレピーヌという豚の網脂で包み、その上から糸で全体に均一な力がかかるように縛り、55℃のオイル・バスに入れる。その後オリーブ・オイルと少量のバターでこんがりとソテー、よく脂を拭き取ってから筒状に切り分けて、更に焼網でグリエする。

複雑な調理加熱工程を経て初めてミルク・ラムの持ち味である柔らかさと、焼いた肉のダイナミズムが両立できる。

2010年11月11日木曜日

Le Marche 2010.11.11

今朝は境港の松葉蟹と瀬戸内海の天然真鯛、そして北海道の生雲丹を買った。

鳥取県西部の境港市は中国地方なので瀬戸内海からは比較的近い日本海だ。高松中央卸売市場にも日本海の魚が来ている。今日は元気な松葉蟹がいた。ブランドを守る為にタグを付けている。しかしこのタグが逆に簡単に偽物を作ってしまうこともあるらしい。なんとも難しいいたちごっこだな。

遠い北海道の物は雲丹、蟹、帆立貝などが市場に並ぶ。

雲丹は淡路島の由良産の物が欲しいのだが流通量が少なくなかなか手に入らない。多くは大阪や京都に行ってしまうらしい、残念だが北海道の雲丹も良いものがあるので購入する時もある。今日はいい物があった。

蟹はやはり日本海の松葉蟹がいい。瀬戸内海の蟹と言えばガザミだ。ガザミと聞いてもあまりピンとこないが通称ワタリ蟹のこと。これから子が入ると美味しくなる。

そして瀬戸内海のスペシャリテ、天然真鯛。

2010年11月10日水曜日

Poisson vivant

高松中央卸売市場は活魚市場だ。実際に生きているかもしくはその日の朝に活け締めにした魚介が多い。漁場が眼の前だから自然とそうなるのだろう。水槽で魚を泳がすにしても海水を海からくみ上げるのが比較的簡単でシステムもできている。市場の水道の蛇口からは海水が出てくる。これをタンクに入れてレストランまで持ち帰り酸素ポンプで空気を海水に混ぜ、生きた状態を保つことができる。それに市場とレストランは車で5分の距離だ。魚に与えるダメージも少ない。いわゆる活魚の日本料理屋さんのようにお客様から見える位置に水槽を置いたりはしないけれど、バック・ヤードで泳がしているものもある。鮮度では決して引けをとらない。

魚は活け越すば活け越す程、身が痩せてストレスを感じるのだから、生きていれば良いという訳でもない。鯛などは船上で活け締めにしたものの方が水槽で泳いでいる魚よりも上質だったりする。その素材に適した管理を行うことが大切だ。料理は素材の管理が上手くいけば、もう半分は成功したようなものだ。

2010年11月9日火曜日

Bibliographie 4 [Bibliographie Gastronomique]

「Bibliographie Gastronomique」 par Georges Vicaire

「料理・美食方、参考書目一覧 ジョルジュ・ヴィケール著 1890年」は前述した故辻静雄先生の「パリの料亭(レストラン)」の「きわめて個人的な参考書目解題」という項目の冒頭で紹介されている書籍だ。料理文献目録、解題だからこれを頼りに書籍を探すことになる。これがなければ何も始められない重要な一冊だ。僕の手元にあるのは1978年にジュネーブの「Slatkin Reprints」から出版された復刻版だ。

2010年11月8日月曜日

Romanee-St-Vivant

例えば、ソムリエ・ナイフとか、シガー・カッター、シガー・ライター、ペン、片手で使うような小さな道具は特にそうなのだけれど、こだわる。手触りとか重み、材質感、色々な要因から感じる心地よさ。好きなブランド。それにその道具との付き合いから生じた歴史や思い出も大切だ。壊れたからってそう簡単に新しい物に移行できない。例えば修理して帰って来たらまた歴史が生まれる。

そして僕は物を集めるのが好きだ。ワイン・セラーは本棚のような感覚。何年も前からずっと持っている葡萄酒も沢山ある。思い入れのある葡萄酒は可愛い。「いったい何時、誰に飲まれるのか、おまえは」と語りかける。愛しているから。だからリストに入れない葡萄酒だってある。「いっそのこと自分で飲もうか」、でも違うんだな、誰かに飲んで欲しいいんだ。少しでも価値観が共有できる誰かに。この辺りが僕のレストラトゥールとしての思考だ。

そして、出会えた。「1998 Romanee-St-Vivant Domaine de la Romanee-Conti」。

5.2858ヘクタールのクリマから1998年の生産本数わずか13026本。サン・ヴィヴァン修道院に由来する歴史ある畑から生み出されるその葡萄酒は、欲したからといって何時でも巡り合えるようなものではない。運命の出会いがない限り。

2010年11月6日土曜日

Guy Savoy

難攻不落の高い城壁に囲まれ、高見から世界を見渡す。自信と威厳に満ち溢れ燦然と輝く都。その王座に君臨する一人のコンダクターがいた。

1988年、当時はその後行われる数度の店舗改装を経る前の状態でミシュランの2星を獲得していた。何度も手紙を書いた。何度も訪れた。しかし創作の場に身を置くことは許されなかった。ある時、ムッシュ・サヴォアは「G」の文字が描かれた一枚のアシェットを僕に手渡してくれた。

そこで彼は世界最高峰の音色を導き出す「Restaurant Guy Savoy」。

2010年11月5日金曜日

Restaurants in the world

世界の料理界に大変革をもたらした張本人、スペイン・カタルーニャ「el Bulli」のFerran Adria氏をはじめ、アメリカ・カリフォルニア「The French Laundry」のThomas Keller氏、アメリカ・シカゴ「Alinea」のGrant Achatz氏、デンマーク・コペンハーゲン「noma」のRene Redzepi氏、イギリス・ロンドン郊外「The Fat Duck」のHeston Blumenthal氏、スペイン・バスク「mugaritz」のAndoni Luis Aduriz氏と、料理のクリエイトをけん引し最先端を突っ走っているのはフランスの三星レストランばかりではない。

しかも、Rene Redzepi氏やAndoni Luis Aduriz氏に至っては「el Bulli」でのスタッフ・キャリアを持った若者だ。創造性と何より才能あふれる最高の料理人たち。レストランとは何とエキサイティングな現場なのだろう。

それでもParisという聖域は料理界の自転軸に変わりはない。

2010年11月4日木曜日

Bibliographie 3 [Restaurant de Paris]

「パリの料亭(レストラン)」 辻静雄著

そもそも、僕が料理文献に興味を持ち出したのは1972年に柴田書店より出版された故辻静雄先生の「パリの料亭(レストラン)」という単行本が1982年に新潮文庫から文庫化され、更に1983年に再版された第2版を手にとったのがきっかけだった。この本に掲載されているレストランのいくつかはまだ現存し、ミシュランの星を維持している。既に閉店したり所有者が変わったりシェフが移転とともに店名を変えている店もあるが、当時これらのレストランの調理場でコミやアプランティとして就労していた人物が今日のミシュランの星を獲得しいて、当時の修業先より更に高い評価を勝ち得ていたりするところに時代の変遷を感じる。
         
この本の「あとがき」前部に「きわめて個人的な参考書目解題」という項目があって、「フランスのレストランで使われている料理技術に関する方法論を歴史的に比較参考するための参考書」とあり、多くの主にフランスの洋書が記されている。その後、僕はこの本を持ってフランスの古書店を巡ることになったのだ。


2010年11月3日水曜日

Bibliographie 2 [Le Repertoire de la Cuisine]

「Le Repertoire de la Cuisine」 par TH. GRINGOIRE ET L. SAULNIER

「フランス料理総覧」 辻静雄監修

この本の原書は「Le Repertoire de la Cuisine」で僕はその復刻版を所蔵している。「Depot et Vente」寄託と販売が「DUPONT et MALGAT - GUERINY, Successeur」とあり、その「QUARANTE DEUXIEME EDITION」、すなわち第42版だ。「Successeur」後継者、相続人という意味だから「DUPONTとMALGATそしてGUERINY 」が後継者となる。面白いのはその下にある「Specialiste de vetements pour cuisiniers」の部分。直訳すれば「料理人の服の専門家」。コック・コート屋さんなのか。「40, Rue Coquilliere 75001 PARIS」と住所も出ているので現存するかそのうち調べてみようか。

「I.S.B.N.2-904578-02-1」、「Depot legal no 12141」だ。「Depot legal 」は「国立図書館などに対する出版物の法定納本」だがインターネットでサーチしてもこの本を見出すことはできない。「ISBN」国際標準図書番号でも出てこない。原書の巻末に記されている通りなのだけれど。

この本の「PREFACE」序文には「1914.3.8. ロンドンにて、 T.G.  L.S.」とある。これは原書の表紙にある「TH. GRINGOIRE ET L. SAULNIER」のことだと思われる、僕の手元にある故辻静雄先生の監修で出版された「<フランス料理総覧>三洋出版貿易株式会社・昭和46年‐初版発行・昭和58年‐増補(牽引)十版発行」には著者であろう2人、「T.G L.S」についての記述がない。

表紙や中扉からわかることはそんなところだ。

とにかく、我々の世界の定番だった「フランス料理総覧」はとても興味深く、かつ今後も研究意欲をそそられる書籍だ。しかしさすがに調理場で手元におく料理人は少なくなって久しいだろう。かつて故村上信夫氏が「私はこれ一冊あれば料理を作るのに困りません」とおしゃっていたのが印象的だ。

「A. ESCOFFIER」の「Le Guide Culinaire Paris 1902」は「Le Repertoire de la Cuisine」のような要約版ではない、むしろ大作で細かいルセットを分析しやすいので今でも紐とく料理人は多い。




2010年11月2日火曜日

Bibliographie 1 [Experimental Cookery]

「ベル・ロウの調理実験」 ベル・ロウ著

この本の原書は「Experimental Cookery by Belle Lowe 4th edition 1955」だ。1955年の第4版の翻訳を柴田書店が1964年に出版して更にその翻訳第2版を1968年に再版した。とても有意義な仕事だと思う。のちの「こつの科学・調理の疑問に答える 柴田書店」などの出現にも影響しているのだろう。

今までは企業が安定した品質で安全な商品を大量生産する食品加工工場を運用するメソッドを確立するために調理を分析、研究してきた。しかしこれからは街場のレストラン・レベルでの調理の科学的アプローチがますます加速してゆくだろう。それは生産性の向上ではなくあくまでクリエーションの方法の一つとして発展し独自の分野を構築してゆくに違いない。

2010年11月1日月曜日

CaVa CaVa vol.2

昨日の日曜日は12時からの「パティスリー&サロン・ド・テ」の後、17時よりサヴァだった。前回のvol.1より人数こそ少なかったのだが、その分皆親密に仲良くなれたと思う。皆、楽しそうで安心した。2010年内のサヴァは今回で最後の予定だが、来年も不定期に開催する。僕たちのサヴァは永遠に不滅だ。

皆さん、ご要望多数なら「隠れサヴァ」とか開催しますよ。お電話ください。